2014年3月1日土曜日

不完全存在のテキスト1

2038年
知らぬ間に外に出されている。私が知っていることを知らない彼らによって、虐待された暁に宙に膜が貼り、餌が欲しいわけだが、存在は絶命したまさにその時に、何かが降って、灰なのかと思ったら黒い雪だった。だから寒くはないのだ。行動範囲は狭まるばかりで、狭いコンクリートの一室で、言葉を交わすこともなく、昼夜を虫と共に過ごしている。虫のことは恐らく私が一番よく理解しているだろう、虫は自由にしている、そう、我々は虫みたいに生きるのだ、誰もが虚空の存在であるあの虫みたいに、分かり易く言えばね、尤も虫がどうだかなんて確実には存じておりませんがね・・・虫たちの談話。

「鳥たちの群れは空中に円を描く・・ああ・・救世主よ耳鳴りのするこの地響きは何だと言うのだね・・タスケテクレ・・終わりなき妄想・・きみらは知っているか・・やがて引力は強くなり宇宙の果てに投げ出される・・関係ないさ・・ぼくらはここでじっとしていればいい・・いいさ、調和は保たれるとある種が滅びることによって・・生存価値なきものは死に値する・・無限の時間を越えて苦悩は空間を揺らす・・食い荒らせ・・滅びいく者たちを食い荒らせ・・創世記より君臨していた我々を駆逐した化け物たちを食い荒らせ・・そのおかげで僕等は自由になれたとも言えるがね・・遠い砂漠の僻地で今も仲間たちは苦しんでいるよ・・灼熱地獄で変化を遂げた僕らの偉大なる祖先に乾杯だ・・血をみるのはもうよそうよ僕らは本能のままにただ生存してきた・・共食いは世の波長を狂わす・・静寂はひとときの幻・・」

等しく与えられた躍動は命の尊さを教えるだろう、末期症状で血液は逆流し、鎌が首を刎ねるあの惨落者どもの群れを。転がった首を見て死刑台の傍に佇む「ある一人の少年」は悶絶と憎悪とを自らの邪心に深く刻み報復の炎を燃やした。苦悶の声を反芻しながらある少年は闇に紛れて路上を彷徨い右手に握った鳥串である醜い男の頚動脈を刺す。血に汚れた掌を街灯に翳して少年は驚愕する。血がこれほどまでにどす黒く穢いものだということを少年は知らなかったのだ。途方に暮れて裸足で一心不乱に駆け出し、川で血を洗い流し次々と流れてくる豊熟した水死体の幻想を見て、突然耳を尖った石で狂ったように叫び切り裂いた、溢れ出て来る多量の血はある醜い男のものとは違い美しい朱色で少年は胸を撫で下ろした、これで死刑台の生首もとある醜い男の穢れた血も枕元で眠る母の顔すらも永遠にお別れだ・・・。ヴァンゴッホの耳、それは偉大なる狂気の源泉である、出来ることならかの少年にも教えてあげたかった・・タブローに描かれたその彎曲された自画像は皮肉にもリアリズムの永遠なる停止したある苦悩の時間を我々に暗示する、断続する存在なき耳鳴りは親愛なる弟の声すらも霞と共に消え去り、蛆と小蝿の羽音を風潮し、よもや遥か彼方に消え去ろうとする自意識が出産したその分身の数々は所構わず嘲笑し、死に逝く間際、天井をぼやけた焦点で穏やかなる眼差しでじっと見つめひとつの真理が何かを知るのであった。


何故だ?何故だろう?いつだって首を吊る為のロープと踏み台は用意されているはずだ。思考の奔流にケリをつけることは容易い。突然窓を叩かれた。「時間だ。」全く酷いもんだよ!80になっても気付かないことを14の齢で気付いている、恐るべき子供。殺されるべきか?自ら死ぬべきか?笑うよ俺は、お前のことをただ笑い飛ばすだけ。


そうさ、あそこに向かうエレベーターに乗って?震えることはない。恐れることは何もない。看守「あんたはどんな人生だった?」うるせえ、日課、そうさ日課があるだけ。勝手に柵で仕切られた、頭にくるからその仕切りに痰を吐くだけだ。意味?意味なんかないよ。思想も問いも何もない。ただ頭にくるだけ。それだけ。

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